感動は「計算」からは生まれない。山梨・西湖から生まれる化学反応を楽しむ。 ―株式会社アミューズ 齋藤大造

感動は「計算」からは生まれない。山梨・西湖から生まれる化学反応を楽しむ。 ―株式会社アミューズ 齋藤大造

新しいチャレンジには、いつも孤独や不安がともなうもの。スタートアップ企業にとって、事業をおこなう場所や、周りの環境はとても重要ですよね。それらの中でもっとも大切なのが「そこで出会える人」ではないでしょうか?

特集「山梨で会いましょう」では、山梨に関わるスタートアップを応援したい、興味がある、一緒に何かやってみたい、といった“スタートアップフレンドリー“な山梨県人にお話を聞いていきます。

第4回目は、2021年に山梨県西湖に本社を移転した株式会社アミューズ(以下、アミューズ)に伺いました。アミューズは、サザンオールスターズや福山雅治さんに代表される数々の人気ミュージシャンや俳優さんのマネジメントをはじめ、映画など映像作品の制作および販売、 オリジナル舞台制作を手掛ける総合エンターテインメント企業。
その本社として2022年10月に完成した「アミューズ ヴィレッジ」の立ち上げメンバーで、責任者でもある齋藤大造さんにお話を聞いていきます。

エンターテインメントに再び向き合うための本社移転

編集部

一見するとオフィスに見えないような、広々として楽しい空間ですが、ここはもともと体育館ですか?

齋藤

はい。今いる場所は、体育館をリノベーションした執務スペースと会議室ですね。目の前には芝生広場・大きなツリーハウスもあります。アミューズ ヴィレッジ全体は、もともとは西湖を望むホテルだった建物とその奥の体育館だった場所をリノベーションしていまして、敷地面積は約8,800㎡あります。ホテルだった建物は、社員の執務スペースの他に、撮影ルーム、レッスンルーム、ライブやセミナーもできる多目的ホール、宿泊できる客室や大浴場などを完備しています。

編集部

すごい広さですね…!まさに、ひとつの「村」のようです。ここは社員さんだけでなくアーティストさんも利用されるんですか?

齋藤

今は社員とアーティストとその家族、それと取引先の企業と交流する場所として利用しています。
アーティストは映像の撮影や制作活動を行うこともありますし、東京で勤務する社員も集中したい時はこちらを利用しています。保養所も兼ねているので、家族を連れてプライベートな時間を過ごすこともできます。

▲「TAI-IKU-KAN」と呼ばれる体育館をリノベーションしたラウンジ空間。今回はここでお話を伺いました。
▲ホテルをリノベーションした「レイクオフィス」
▲施設内にはレッスンルームや撮影ルームも完備。
編集部

それは嬉しいですね!そもそも、なぜ本社を移転されることになったのですか?

齋藤

音楽だけではなく、演劇やスポーツまで体験できる大規模なフェスやイベントを自社でプロデュースして、周辺の飲食や宿泊も取り込む構想を数年前から描いていました。その候補地の一つとして山梨を何度か訪れていました。ちょうどコロナ禍に突入し、この場所との出会いが大きな転機となって、本社移転の決断につながりました。

編集部

タイミングとご縁がちょうど合致したのですね!コロナ禍がきっかけになったというのも興味深いです。

齋藤

創業以来私たちは、「ライブイズム」を大切にしてきました。だからこそ、コロナ禍で顔を合わせて働くことが難しくなった時期は、社内全体に大きな影響がありました。もともと東京一極集中から離れるという構想は漠然と持っていたのですが、コロナ禍を「新たな時代の転換点」と捉えたことで、その決断を一気に加速させることができたと思います。

編集部

支社やサテライトオフィスではなく「本社」としたことに、その意志の強さを感じます。

齋藤

そうですね。支社にするという選択肢もあったのかもしれませんが、あえて本社とした背景には、この機会をあらためて自分たちでエンターテインメントをつくることに向き合う、新たなステージに上がるきっかけにしよう、という会社としての強い意志があったからです。

編集部

この場所をエンターテインメントの拠点にしよう!という思いですか?

齋藤

はい。自然豊かで環境のいい場所でこそいいアイディアが生まれ、よりよいものがつくれるということを証明していきたいですね。

編集部

実際に本社を移転してみて、社員や所属アーティストの皆さんに変化は感じますか?

齋藤

アーティストやお取引先と広いスペースで会って打ち合わせができるし、土日が仕事という社員も多いので家族を連れてきて広い場所で子どもを遊ばせることもできるのは好評ですね。2024年には、撮影や番組制作など、この場所を活用した「ものづくり・ことづくり」が50件にのぼりました。アーティストの間でもアミューズ ヴィレッジの存在と可能性が徐々に浸透してきて、活用する機会がますます増えています。

編集部

この場所を通じて新たなエンターテインメントが生まれようとしているのですね!社内だけでなく、お取引先にも積極的に視察をお声がけしているそうですが、反応はいかがですか?

齋藤

2022年10月の完成以来、これまでに300以上の行政や企業の方々にお越しいただきました。アミューズ ヴィレッジを目にした瞬間、「やっちゃいましたね(笑)」「想像以上のスケールですね!」といった驚きの声をいただくことが多いです。私たちはエンターテインメント企業なので、話題を生んで、楽しんでもらうことを大切にしているので、そうした反応をいただけるのはとても嬉しいですね。

編集部

社外の方々もワクワクしている感じ、とてもいいですね。アミューズ ヴィレッジを運営する立場として、これからどんな場所にしていきたいですか?

齋藤

せっかくこの場所に本社を構えたからには、地域や企業の方々とのつながりを広げていきたいです。少しずつですが今年は地元のイベントのプロデュース依頼や、警察署の1日警察署長にアーティストを起用する依頼などもいただくようになって。こういう活動を通じて、地域の活性化に貢献できたら嬉しいなと思っています。さらに大きな視点で言うと、山梨の色々な地域資産とつながって「地域ブランド」をプロデュースしていきたいと考えています。この場所を拠点に、何か新しいことに挑戦したい方々と出会って、一緒に化学反応を生み出していけたらと思っています。

「感動」を生み出すために、あらゆる可能性にチャレンジする。

編集部

驚くのは、本社の運営だけでなく、山梨で新規事業の展開も始められていますよね?

齋藤

はい。よく「山梨にはどんな目的できたんですか?」「山梨でなにをされているんですか?」とご質問いただくのですが、アミューズは「プロデューサーハウスアミューズ」という理念を掲げています。東京ではあらゆる才能とつながって、世界と勝負する「アーティスト」「作品」「技術」をプロデュースする一方で、山梨では、地域の多様な資産とつながり、「地域ブランド」をプロデュースすることで「新しい感動」を創出したいと考えているんです。

編集部

地域ブランドのプロデュース事業は、具体的にどんなことをされてるんですか?

編集部

幅広いですね…!ちなみに、会社として、山梨での新規事業に期待しているのはどんなことなのでしょう?

齋藤

コロナ禍でイベントの開催が一切できなくなったことで、事業ポートフォリオを拡充する重要性を改めて強く実感していたんです。会社としては、アーティスト事業を中核としながらも、別の収益源を確保することも期待して、新たなチャレンジとして山梨での事業開発に取り組んでいます。

▲エンジン(動力)を使わず、抜群の安定性で湖上をを進むアクティビティ「HOBIE」
▲昨年オープンした「Restaurant SAI 燊」。富士北麓の自然に育まれた食材を活かした新ジャンルのガストロノミーを提供している
編集部

事業の幅を広げることで、会社としてのリスク分散や、変化の時代の中での「次の一手」を見つけることを目指していたんですね。その中でも、「エンターテインメントをつくる」「感動をつくる」ということは一貫されていますね。

齋藤

そうですね、近年、エンターテインメントの在り方は大きく変わってきていると感じます。私自身、強い感動を生み出し、人の心を撃ち抜くことができたなら、それこそがエンターテインメントだと思っています。

編集部

たしかに。イノベーションや感動は、計算づくの世界ではなく、その外側の「予想外」みたいなところにある気がします。聞いていてワクワクしてきました!

オフサイトミーティングを通して生まれる化学反応

編集部

他にも今後予定している取り組みはありますか?

齋藤

アミューズ ヴィレッジの可能性をさらに広げるにはどうすればよいか、常に考えています。最近では、その一環として企業の「オフサイトミーティング※」の受け入れを試験的に実施しています。


※オフサイトミーティング:職場を離れた「非日常的な場所」で行うミーティングのこと。普段と異なる環境が気分転換となり、集中力や発想力の向上につながるといわれている。

編集部

オフサイトミーティングですか。社員の方以外でもこの場所が利用できるんですね!

齋藤

はい。これまで視察や宿泊に訪れた取引先企業の方々に、この場所の可能性についてヒアリングしたところ、「宿泊もできるしうちの会社でも利用したい」という声を多くいただきました。

編集部

たしかに、既存のホテルだと利用時間や設備が合わなくて使いにくいという話も聞くので、なおさらニーズがありそうですね。

齋藤

そうなんです。普段と違う開放的な空間で働くことでインスピレーションが刺激されて、クリエイティブな発想が生み出されるといわれてまして。そういう意味では、HOBIEなどの自然体験を通じてチームワークが深まったり、リフレッシュ効果も期待できると思います。食事面では、BBQが特に人気で、ビュッフェスタイルでの提供も可能です。チェックイン時間やチェックアウト時間も柔軟に対応し、快適にご利用いただけるように工夫しています。

編集部

それはありがたいですね。まさにアミューズが「自然豊かで環境のいい場所でこそよりよいアイディアが生まれ、ものづくりが加速する」と考えたことに通じますね。オフィスでもない、ホテルでもない環境が新たな発想に繋がりそうな予感がします。

齋藤

そうですね。この場所からいろんなプロジェクトが生まれたら嬉しいです。

編集部

どんな企業の方に来てほしいですか?

齋藤

当面は、取引のある企業や紹介を中心に受け付けを予定しているのですが、そこから少しずつご縁を広げて、色々な業種の人と繋がっていきたいです。私たちが「こういう風に使ってください!」とを決めるのではなく、「こういう風にも使えるんだ!」と私たちが気付かされるようなことを期待しています。

編集部

これから山梨に拠点を構えたいと考えているスタートアップ企業にとっても、この場所が新たな事業のきっかけになるかもしれません!本日はありがとうございました。