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J-KISSとはどのような資金調達方法?メリットや手続きを解説

スタートアップ企業の資金調達方法として、コンバーティブル・エクイティの1つであるJ-KISSがあります。アメリカでは同様の資金調達方法である「KISS」などが一般的に使われているものの、日本ではあまり浸透していないため、J-KISSについて詳細を知らない方もいるでしょう。

当記事では、J-KISSのメリットや手続き方法を詳しく解説します。資金調達の必要があるスタートアップ企業はぜひ当記事を参考にしてください。

1.J-KISSとは?

J-KISSとは、シード期のスタートアップ企業がスムーズに資金調達を行うための契約書のひな形を指します。アメリカで普及している投資契約書「KISS」の日本語版として作られており、株式会社Coral Capitalがパッケージを公開しています。「KISS」はKeep It Simple Securityの略称です。

また、資金調達ラウンドにおけるシード期とは、起業の準備段階にあたります。ビジネスモデルを定めて法人を設立したり、市場調査を行ったりする段階を示すのが一般的です。

1-1.銀行からの融資とは何が違う?

J-KISSはコンバーティブル・エクイティによる資金調達の1つです。コンバーティブル・エクイティとは、コンバーティブル投資手段として、有償の新株予約権を発行することにより資金調達する手法を指します。投資家が会社へ資金を供給し、会社の経営が安定して正確な企業価値評価ができるようになったタイミングで株式転換を行うものです。正確な価値評価が困難なスタートアップ企業で広く採用されています。

コンバーティブル・エクイティを活用すると、公開契約ひな形を用いて迅速かつ簡単に資金調達できます。登録免許税などの発行コストが低く、元本償還や利息返済が不要な点も魅力です。

コンバーティブル・エクイティの具体例としては、KISSやSAFEなどの契約フォーマットが知られています。近年、アメリカだけではなく、国内企業や投資家の間でも注目されている手法です。

(出典:経済産業省「コンバーティブル投資手段」活用ガイドライン

1-2.J-KISSが必要とされる理由

J-KISSが注目を集める理由としては、日本においてシードステージの資金調達手段が未成熟な点が挙げられます。欧米諸国では、シード期にコンバーティブル投資手段による資金調達が積極的に行われています。

例えば、米国シリコンバレーにおける、株式によるシード資金調達の約50%は、コンバーティブル投資手段によるものです。しかし、日本におけるシード期の資金調達のうち、コンバーティブル投資手法によるものは10%程度にとどまっています。欧米諸国にならってコンバーティブル投資手法の認知度を高めることにより、シード投資の促進が期待されています。

また、新型感染症の流行以降に資金調達に苦しむ企業が増えた点も、J-KISSが必要とされる理由の1つです。既存企業も資金不足で頭を抱える状況下で、新興企業が投資家や資金を集めるのは簡単ではありません。経済産業省は「コンバーティブル投資手段」についてのガイドラインを策定し、新型感染症との共存が求められる時代に有用な方法として、新株予約権発行を推奨しています。

(出典:経済産業省「コンバーティブル投資手段」活用ガイドライン

2.J-KISSを活用するメリット

コンバーティブ投資手段であるJ-KISSを利用することで、複数のメリットが得られます。具体的なメリット3つについて解説するため、事業におけるJ-KISSの活用を検討する際の参考にしてください。

2-1.企業価値評価を先延ばしにできる

企業価値評価とは、バリュエーションとも呼ばれ、ある会社の価値や株式の価値を算出することを指します。資金調達時には、投資家の重要な判断基準として使われます。

スタートアップ企業は、事業価値などの未確定要素が多いため、投資家を集めるのも簡単ではありません。また、事業価値が見通せない状態で株式を発行しても、誤った企業価値評価につながるリスクがあります。

J-KISSを使った資金調達では、投資における詳細な条件交渉を将来に繰り延べられるのがメリットです。投資時点ではあくまで新株予約権として、最低限の条件だけを決めておき、事業が安定してから普通株式や優先株式に転換する仕組みです。正確な価値評価が困難なシード期ならではの課題をカバーできるため、スタートアップ向けの調達手法として適しています。

2-2.迅速に融資が得られる

資金力が乏しいシード期には、とにかく早く融資を受けたいと考える企業が多いのではないでしょうか。J-KISSでは、企業価値評価を先送りできるため、交渉から着金までがスピーディーに進むのも特徴です。

また、株式転換までの間は株式が発行されておらず、株主間での契約締結も必要ありません。公表されている契約書テンプレートを使い、株式取得と比較して簡素な手続きで契約可能なため、迅速なファイナンスが実現できます。

2-3.インセンティブ設計を柔軟に行える

通常、優先株式から普通株式へ転換を行う場合などの条件は、上場や株主が転換請求権を行使したケースを想定して適切に定める必要があります。

J-KISSは、株式転換条件を自由に定められるため、インセンティブ設計が柔軟に行えるのがメリットです。設定した転換条件の達成に向けて、スタートアップ企業と投資家双方において、事業成長への責任感を高める効果が期待できます。

例えば、事業会社とスタートアップ企業の協業では、業務上のマイルストーンを転換条件に挙げるのも有効です。具体的には、事業に必要な許認可の取得や試用製品の開発といった条件が考えられます。スタートアップ側と投資側が、互いに最もコミット具合を高められる条件を探るのがポイントです。

3.J-KISSを利用するときの手続き

実際にJ-KISSを利用するときに必要な手続きは、以下の通りです。
J-KISSを利用するときの手続きstep1-3
J-KISSを利用するときの手続き step4-5
(出典:e-GOV法令検索「登録免許税法」

まとめ

J-KISSとは新株予約権を発行して資金調達を行うときに使用する契約書のひな形のことを指します。通常の株式発行に比べると迅速に資金調達ができるので、スタートアップ企業に向いている資金調達方法です。

J-KISSをはじめとしたコンバーティブル・エクイティは、日本ではあまり広まっていない資金調達方法ですが、融資のスピード感だけでなく、インセンティブ設計の自由度の高さもメリットです。スタートアップ企業はJ-KISSも活用しながら、事業の準備を進めましょう。

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